インタービュー
ブックレビュー
エイプリルフール
スリーナイン
インターアクター
メッセイジ
マンイーター
コマーシャル
ブラッドタイプ
サイボーグ
ファミリーダム
パフォーマンス
インタービュー
「イチローさん、今回のWBC、いつになく熱くなってましたね!?何か心境の変化でも?」「僕は、けっこう熱い人間だよ。少年野球の頃から」「向こうのメディアもずいぶん反省してましたね。本塁打も速球もないのに勝てた日本のヤキュウに学ばなきゃって」「パワー・ベースボールに見慣れた連中にはかえってそれが新鮮だったんじゃない?」「イチローさんも今回はずいぶん楽しんでましたね」「野球人生で最高の気分だったよ」「え?メジャーで年間最多安打の記録を塗り替えたときより?」「アレも、もう自分の記録との戦いだからね」「わたしらにしてみりゃ、大リーグで日本人が活躍してるってだけでスゴイのに。しかも年俸は億単位だし」「所詮、数字で人生最高は手に入らないんじゃない?」「それは手に入れたから言えるんですよ」「だけど本当に今回、日本人でよかったって思ったよ」「お国を背負って世界一になったからですか?」「いや、みんなで喜べることなんて遠ざかっていたから、思い出させてくれた」「あっちにもそんな仲間はいるでしょ?」「個人の成果で評価するからね、あっちは」「先輩後輩とか変なシガラミがないとこがアメリカのいいとこなんじゃないですか?」「そうだけど、けっこう寂しいもんだよ。日本で育った身としちゃ」「じゃあ、いつか日本の後輩たちに恩返しなんて?」「ツルの一声でもあればね」「ホント!?」「ウソウソ、冗談。三年後のWBCも声がかかるようにしていかないと」「それじゃ、三年目の浮気!?ってわけですか」「だから、大目に見、ろ、よッ」そういったのは昨日、イチローにシャンパンを口から吹きかけたウエハラだった。「お前みたいな先輩を敬まない、ふざけたヤローがいるから!」「日本人でよかったんでしょ!?」2006年3月23日
ブックレビュー
「ナカハラくん、今度の小説はスゴイって、みんな噂してるよ」「あんな、世の中暗くなるようなの読まない方がいいっすよ」「でもさ、今の生きづらい時代らしいんじゃない?『美しきナンタラ』なんてキレイゴトよりかはさ」「正直、書いてて辛いすよ」「いや、そのバカ正直さが文学の希望なんじゃないか」「みんなひいてますよ、きっと」「だいたい何で君みたいな天才がモテないかが不思議なんだよ」「世の女性はタッキーとかカトゥーンみたいなのがいいんでしょ?」「あんなのミテクレだけで中身ペラッペラじゃないか」「『人は見た目が9割』だからね」「あの本も売れとるなあ」「売れてるってことは今の時代らしいんじゃない?」「あれ読んだ?」「レビューだけね」「で、どう?」「冷めて見てるよね。オレはさ、まだ熱いなって思った。セックスとか暴力なんて書いてるくらいだから」「君はまだ若いから仕方ないよ」「若くないっすよ、もう三十五だもん」「バカ言え!それ言ったらオレなんてどうなるんだ!」「ジジイ?」「ははは、人間六十にもなれば、変なイジもなくなるのさ」「意地わる爺さん!?」「同期もどんどん死んでくしさ」「六十で?」「あっけないもんだよ。みんな心不全とか脳溢血で一発だもん」「オレもヤバイのかなあ、こんな不健康な生活だしなあ」「君もそろそろ身を固めたら?」「相手がいないっすよ」「何で?」「何でっていわれても」「セックスとか好きじゃないんじゃないの?」「じゃなきゃ小説に書いたりしないでしょ」「あれは肉慾であって、セックス好きは小説なんて書く暇ないから」「体位とか前戯とか面倒くさいからなあ」「それだ!相手ができない理由」「だったら料理のうまいメイドさんでいいや」「欲がないなあ。それじゃ本、売れないぜ?」「いいよ、そんなの」「ダメダメ、ウチの会社が困る。いい子、紹介するよ。どんなタイプ?」「いいよ、そんなの」「巨乳系?それともロリ系?」「だったら言葉もロクにしゃべれない肉欲の塊みたいな妖婦がいい」「むずかしいなあ、それ。ジャングルか養護施設にいるんじゃない?でも、何で?」「そいつブッ殺して牢屋にぶち込まれたい」「獄中で執筆なんて、オスカー・ワイルドかマルキ・ド・サドみたいじゃん」「てゆうかラクロみたいにバクロ本書いて大ヒンシュク買いつつモンスターヒット飛ばしてあげる」「大ヒンシュク…買う?やっぱり売れないんじゃん」2006年3月27日
エイプリルフール
「被告人ジョウユウに尋問する。何がアサハラを教祖に祭り上げたと思うかね?」「いろいろありますが、一言でいえば、思想だと思います」「それは彼の思想が崇高だという意味か?」「いえ。反対に彼は無思想でした。そもそも裸同然の彼が健康食品の販売で大儲けできたのも、商才といいますか、エコノミックアニマル的な無心さゆえに人々のニーズに敏感だったからです」「被告人アサハラに尋問する。その収益を何に使った?」「もちろん会社の運営だ」「会社?教団じゃないのかね?」「私は教団なんて知らない。ただ人々の欲望に忠実に対処しただけだ。それがいつの間にか、たくさんの同士に囲まれていた」「それが信者だな?」「私は信者も知らない。ただ人々の悩みに誠実に対処しただけだ。わかりやすく歌にしたり、ときにはマンガで絵解きしたり」「それが教典じゃないのか?被告人ジョウユウに尋問する。教典はアサハラが作ったのだろ?」「いいえ、細かい事は我々の法務大臣が手がけました」「法務大臣?他にも自称大臣がいるのかね?」「はい、それは今のミンシュ党も同じでしょう」「被告人アサハラに尋問する。君は総理大臣のつもりだったのか?」「いや。私は何者でもない。ただ周りの人達が勝手にそう呼んでただけだ」「被告人ジョウユウに尋問する。アサハラは総理大臣だったのか?」「はい。我々はそう考えていました。彼の才能には不思議な魅力と、真実があったからです」「シンジツ?」「次々に奇跡を起こしたんです」「キセキ?」「予言が的中したのです。ですから彼の言葉に耳を傾けないワケにはいきませんでした」「被告人アサハラに尋問する。どのようにして予言などした?」「私は過去を述べただけだ」「それでは例の弁護士殺害事件やサリン事件を指示したときも、過去を述べただけというのか!」「私は何の指示もしていない。ただ、このままでは合理主義の暴走によって人類は滅びると言っただけだ」「何故、滅びる?」「思想が殺し合いのモトになってきた歴史を語っただけだ」「例のXデーは、どういう根拠だ?」「私は日付など言わない。ただ沈黙していたら、周りが勝手にそれを神のお告げと解釈したらしい」「被告人ジョウユウに尋問する。何故、予言を実行に移した?」「予言が外れたら総理の面子も、大臣の威信もガタ落ちですから、我々執行部の手で何としてでも秩序を守らねばなりませんでした」「チツジョ?」「我々の、秩序です」「しかし、たった一日で人類を滅亡させるなんて無理だと思わなかったのか?」「当然思いました。ですから我々は警告のつもりで自前のガスをばらまきました…地球の大気が有毒化しているという」「では、Xデーの3/20は、どういう意図だ?」「ホントは4/1にやるはずだったんですが、バカな部下が先走りまして」
2006年3月29日
スリーナイン
「松本先生、人は何故、中央線に飛び込み自殺するんですか?」「何で漫画家の私にそんなこと聞くのかい?」「だって先生は鉄道に詳しいじゃないですか」「ああ、君は銀河鉄道スリーナインを知ってるのかい?」「ええ、小さい頃テレビでも映画でも観ましたから」「君は松尾芭蕉という人を知っているかい?」「ええ、古池や蛙飛び込む…の人でしょ?」「古池を中央線に変えてみたら?」「…サラリーマン飛び込む、何の音?」「時間の音だよ。私のスリーナインの話もね、汽車に乗って少年が時間の中を旅する話なんだ」「銀河鉄道が時間のメタファーであると。じゃあ、メーテルは?」「少年の夢だね。時間の中を夢と一緒に旅してる。そしてときどき駅に降りると、汽車が止まるように時間も止まる。街の中をさまよう少年は、実は夢の中をさまよってマンガを書いてる私のことなんだ」「夢の中って時間は止まってますもんね」「そう。そこに永遠もある。つまり時間のない世界だね」「で、どうしたら中央線の自殺者は減らせますか?」「君はそういう仕事をしてるのかい?」「はい。もうマグロ見るの、イヤなんで」「マグロ?」「ええ、業界用語で、礫死体のことなんです」「ううん、それは深刻だね。夢の世界と現実はアベコベなんだよ。君は電車に乗ると眠くならないかい?」「ええ、あの揺れが心地よくて」「それは電車に乗るってことは、スリーナインから下車することだから夢の中をさまようことだろ?」「ああ、ホントにアベコベだ!じゃあ、確か、スリーナインに置いてけぼりにされるのは死を意味するんですよね?アレは何ででしたっけ」「永遠に夢の中をさまようわけだろ?つまり時間が止まるのが現実には死だからさ」「じゃあ、それとアベコベに、現実に走ってる電車に乗る、つまり飛び込むことで時間を永遠に止めようとして、みんなマグロになっちゃうんですね」「そういうことになるね」「そういえばマクロっていうと大宇宙って意味ですよね?ってことは、夢の中で宇宙空間に放り出された姿が現実にはマグロってワケ!?」「ダジャレなんか言ってる場合じゃないんだろ?」「そうでした…本人としては一瞬にしてマグロになって死ねるのはいいんでしょうが、周りが大迷惑でして。後始末は大変だし、ダイヤは乱れるし」「それだ。時間通りに電車が動くから飛び込みたくなるんだよ」「は?そんなこと言ったって、それが基本でしょう」「私の生まれた時代の鉄道なんて、実にいい加減だったよ。今だって田舎とか外国の鉄道は平気で一時間くらい遅れるから、飛び込みたい人も飛び込むタイミング逃すんじゃない?」「なるほど。じゃあ、もうダイヤなんか絶対に守りません!」「その代わり、君のクビが飛ぶかもね」
2006年3月30日
インターアクター
「ホリエモンさん、独房生活はどう?」「あれ?よくここのアドレスわかったね」「ネット社会は双方向ですからね」「そういやあ、メディア界は今どうなってる?」「まだ気になるんですか?」「ビジネスは人生の花道だからね」「それはそうと、そっちの生活はどうなんですか?」「何もないよ。おかげで読書三昧。いまならブログにすごい記事書けそう」「また食い道楽の話?」「あんなのもうクダラナイ」「すごい心境の変化ですね」「アタマの中にしか花道のない生活だからね」「もともとそういうビジネスだったじゃないですか!」……「カリナちゃん、輪廻の映画、見ましたよ。すごい怖いメイクでしたね」「そう!血管が顔にどんどんついてくんですよ!」「けど、モデルさんのイメージ大丈夫なの?」「あー、全然へいきです。ホントの自分じゃないですから」「仕事以外でホントの自分なんてあるの?」「うーん、じっさい考えたことないですけどねえ」「いろんなファッションに変身するのって楽しい?」「すっごく楽しい!生き甲斐ですね」「結婚しても続けるの?」「じっさい結婚するかもわかんないですけど、たぶん、理想の女性になったらやめるかも」「リソウの女性って?」「お母さんみたいな」……「ジャパネットのタカタさん、けっこう歌、お上手なんですね」「ああ、カラオケの通販番組見てくれたの」「一緒に出てた作曲家の方もタカタさんの話術に乗せられてましたよ」「実は自分が楽しくてやってたりして」「寅さんとか、こち亀の両津みたいでしたよ」「昔の商店街にゃ、あんな威勢のいい人間がいっぱいいたのになあ。それがめっきりいなくなっちまった」「商店街はどこも元気ないですねえ」「だからテレビでたたき売りをエンターテイメントにしようってわけよ」……「サカグチアンゴさん、最近の安楽死問題どう思います?」「生かしておく医術があるのは否定しようがない」「いつまでも死ねないってことは、文明は人間から死も奪ったんですかね?」「死ってのは急にやってくるもんじゃない」「アンゴさんも大往生の前に脳出血の予兆とかありました?」「私は脳出血で死んだんだ?」「あ、そうか、本人は知るわけないですね」「そういえば、肩凝りがひどくてねえ」「それでも小説のお仕事やってたんですか?」「死ぬ覚悟で快楽はやるもんだ」「死ぬ覚悟ってどうしたら持てるんですかね?」「私の場合は、書くことが生きる手段であり、また死ぬ手段だった」「ビートタケシさんの本で、死ぬための生き方、なんてのがありましたね」「誰だ、それ」「元芸人の映画監督です」「なるほど。芸人は人生を芸道に捧げておるようなものだ」「じゃあ、みんな芸人になるしかないですかね」「女もみんなゲイシャになるしかないな」
2006年4月1日
メッセイジ
「これは現代の狂気です。そうとしか私にはいいようありません」「三島さんの何が狂気なんすか?いいじゃないすか、憲法9条改正大いに結構」「いいかい、自衛隊も、国産の武器も世界じゃ通用しない劣悪品なんだぜ」「イシハラさん、いつから左翼になったんで?」「私は危ないと言ってるんだ。政治家が腰抜けだから三島がこんな羽目になったんだ」「確かに偽メイルなんかで大騒ぎしてる国会は間抜けですね」「政治も戦争も騙し合いの知恵比べだ。日本人は争いを好まない穏和な民族というが、敵に攻め込まれたり、拉致されても、黙って見殺しにするんじゃ、痴呆としかいいようがない」「チホウ?老人ボケってことですか?」「ボケは老人だけがなるもんじゃない。人の話を聞けない今の若者にも多い。三島もここ数年そうだった」「ボケてて小説なんか書けますかね?」「あれは一年前、官房長官に施政方針演説の意見を求められたときだったが、三島は人の話には関心を示さず、自分の話は実に正確な時間でしたんだ。東大全共闘の討論集会のときも学生の話なんか一切聞いちゃいなかった」「それで思い出しましたけど最近、三島さんの本は口述筆記らしいんですが、予め書いた原稿を読んでるみたいに正確らしいですよ」「そんな芸当ができるのも、彼が自らを時間の中に封鎖していたからだ。そこが居心地いいのは不本意な現実に煩わされないからだ。そんな環境では人は誰だって胎内の胎児みたいに世界から孤立する」「それってオウムみたいですね」「戦前の帝国政府も、維新前の江戸幕府もそうだった。だから外的な革命が必要だった」「いわば帝王切開ですね」「それなら母体は死なないが、バカは死ななきゃ治らないというように痴呆を裁けるのは自死だけだ。三島も日本が魂の空白状態に落ち込む前に内的な革命が起こるのを望んだんだが、現実に失望して自らの未来を過去で裁いたんだろう」「何でなんだ、ちくしょう!といって割腹したらしいですよ」「それが夢から醒めたときの嘆息なんだろう」「ますます痴呆が増えるニッポンは畜生道まッ逆さまッすね」「北や中の核にやられる以前に日本丸が世界の粗大ゴミになる日も近いな。政治においても言葉は孤独だが、そんな意志疎通の不能と痴呆は関係あるんじゃないか」「フノウっていえば、インポが関係あるっていう医者もいましたよ」「ふーーん…確かに自らの肉体への意識なしに国家なり民族を自覚することは出来ないけど」……
「キャハハ!おもしろー!」「おい、笑うなよ。射精したの十五年ぶりなんだから」「だから言ったでしょ?シャワーで勢いよく亀さんのお腹を刺激するといいって!」「そろそろやめろよ。くすぐったいよ」「じゃあ、次はオシッコも」「無理だよ、イッたすぐ後は」「大丈夫。亀さんの背中辺りがツボなのよ」「アレレレ、何かまたくすぐったくなってきた…」「キャハハハハ!ほら、すっごおーぃ!湧き出る湧き出る岩清水」「アリガト。また来月くるよ。治療と思って」「毎週きてる九十のお爺ちゃんもいるわよ。医者から健康の為に女遊びしろって言われたんだって」「こんな分厚い本書いて自閉隊してる場合じゃないな」「男ならトップになって死になさいよ」「それじゃ、全国民に告ぐ!ボケとる場合じゃねえぞ、コラ!徴兵制復活だッ!」「あなたって、ちょびヒゲ生やしたら…ヒトラーみたいでカワユィかも」
2006年4月3日
マンイーター
「ムツゴロウさん、こんにちは!ハタさんは東大出身なのに、どうしてそんなにヘンタイなんすか?」「何でボクが変態なの?」「だって飛んでるハエをつかまえてフライパンで炒めて食べたりするらしいじゃないすか」「何だ、そんなことか」「動物のオシッコも飲んだりするそうすね。勉強のしすぎで、アタマ変になったんじゃないすか?」「何ともないよ。君も飲んでみたら、自分のオシッコとか。世界が変わるかもよ!?」「アタマ大丈夫すか?」「ウサギとかカエルも鶏肉みたいで、けっこう美味いよ」「まともなモノ食うカネもないんすか?」「うーん、ないといえばないなア」「そんなはずないっしょ。だって、たまにテレビに出演したり、本なんかもたくさん出して稼いでるじゃないすか」「そうでもしなきゃ、アフリカとかアマゾンの珍種を食いに行けないからねエ」「そこら辺で売ってるモン食べればいいじゃないすか」「もちろんそれも食べてるよ」「じゃあ何でわざわざ…」「健康のためかな。ほら、70になっても、こんなにぴんぴんしてる」「ワニとかハエ食うのが健康にいいンすか!?」「食うことは愛情だしね」「何も動物ばかり愛さなくても人間愛せばいいじゃないすか」「ヒトは食えないよ」「そりゃ犯罪ッすもんね」「そうじゃなく…」「え?ムツゴロウさん人食ったことあるんすか?」「人を食った話はよくするねえ」「冗談じゃなくホントに!マズイんすか?ジンニクは」「ニンニクよりはマズイかもね」「だ、か、らッ!」「君は戦争を知らないから、わからないと思うよ」「人間の味なんて知りたくもないッすよ」「味じゃなくて、友達がみんな死んじゃう悲しさだよ」「じゃあ、ムツゴロウさんは人喰いして人情のわかるキチガイになられたってワケすね?」「ボクだけじゃないよ。誰だって愛情が凶器だと知れば、クレイジーになるしか救われる道はないのさ。ボクは動物狂だし、麻雀狂だよ」「じゃあ、キチガイもヘンタイも軽蔑してるオレらは一体何なんすかね?」「軽蔑してるってことは、同類なんじゃないの」「オレらがキチガイのヘンタイだって!?そんなバカな!」「その証拠に共食いしてるじゃない、観念とかカネとかで」「そんなのしてないっすよ」「でも君はキレイな女の人とエッチとかしたいんじゃない?」「そりゃあ、オトコだもん」「女性こそ、マンイーターだよ」「人喰いってこと?」「その証拠に最近の女性はペット好きだろ?」「いいオトコがいないから?」「子供も少ないしね。ボクの動物王国を北海道から東京のあきる野に移転したのも、そういうマンイーターをなだめるためなのさ。まーいったー?」「そんじゃ、まーいっかア…ところで動物王国で死んだ動物はどう始末してるんですか?火葬?土葬?」「むろん、ワシが喰っとる」
2006年4月7日
コマーシャル
「武富士みたいなCMはどうです?」「どんなのだっけ?」「フラッシュダンスみたいに、みんなで夢に向かって踊るやつ」「アメリカンドリームなんて、もう古い」「じゃあ、もっと露骨にボインのギャルが『♪お金より大切なものがある〜』なんて歌いながら微笑むとか」「だいたい女の子の甘い囁きに引っかかるなんてバカな男くらいなもんだ。もっとウチは幅広い顧客を狙うべきだから、老若男女問わず訴えかけるイメージがいい」「それが一番難しいんですよ。親子愛とかペットを前面にうち出したアイフルも業務停止になりましたし」「夢もダメ。美女もダメ。愛もダメか。それじゃあ、みんなが清く、正しいと思ってるイメージを使うしかないな」「昔あった、船舶振興会の『一日一善』みたいに剣道少年を出したらどうです?」「いまどき剣道は流行らないな。野球ならどうだ?」「だったらアイススケートのほうがジャストですよ。しかし高利貸しがアイススケートなんて、氷菓子って感じですねえ」「あ、それだ。懐かしい駄菓子屋のイメージで行こう!川越とか浅草辺りでロケだ」「そんなのみんな見ますかね」「みんなじゃなくていい」「さっき老若男女問わずって言ったじゃないですか」「カネとヒマを持て余してる年輩層をターゲットにするんだ」「オレオレ詐欺みたいに?」「カネに困るのはいくらかカネを持ってる人だし、テレビをよく見るのはヒマな人だ」「なるほど。カネもヒマもない若造から搾るよりは、有り余ってるところから取るならいいじゃないかと?」「取るなんて、人聞きの悪い。カネは天下の回り持ちっていうくらいだから、たまってるカネのめぐりを少しよくしようって社会奉仕だ」「まあ、昔のことはみんな清く正しいと思いたいものですしね」「その良心をくすぐるんだ」「だったら社名も変えますか?」「何に?」「貯金振興会とか」
2006年4月16日
ブラッドタイプ
「ノミ先生、こんばんわ。先生は東大工学部と法学部まで出たのに、血液型の研究なんかに人生をムダに費やしたって人に言われませんか?」「B型の人間にとっちゃ、バカって言われるのは慣れっこだからねえ」「先生もバカのBでしたか」「すると君もか?」「いえ。何型に見えます?」「こんな研究してるクセに、人の血液型って当てられなくてねえ」「ボクの家族はみんなBなんです」「すると君はOか」「さすが先生。親の血液型から生まれる子の血液型も決まるんでしたよね」「そう。Bといえば遺伝子型はBOかBBだから、できる組み合わせもBOかBBかOOだからね」「その辺はさすが工学部出身の理論派ですね」「いやいや。論より証拠だよ。B型が科学好きなのも理論に頼れない現実派だからだ」「何で現実派なのにマイペースとかズボラなんて言われるんですかね」「客観性のなさだろう」「うちのB型人間も自分勝手で気分屋なんですよ」「さすが君はO型の客観性でみてるな。Bのダメなところは自分でそれをわかってないところだ。私の場合は、それを科学の眼で補っておる」「客観性は大事ですよね?」「まあ、人間社会は過去の悲惨な歴史から、それを学ぶ方向に向かっておる」「一番、客観的なのは何型ですか?」「どうしてそんなこと知りたいのかい?」「もうじき政権交代の時期ですが、次期首相には何型がいいかなと思いまして」「このグラフを見てご覧。縦軸が自意識で、横軸が主観性。右上にいくほど自我が強くて主観的。王様みたいなものだ。そして左下にいくほど、反対に自我が弱くて客観的」「それ神様みたいに理想ですね」「AとOは左上。Bは右下。そしてABは左下と右上に二つあるだろ?」「ABは二重人格っていいますね」「極度に自我がなくて客観的ってことは現実そのものなんだけど、人間である以上は同時に正反対でもないと社会生活に無理があるんだろう」「理想は理想でしかないってワケですか」「私の調査によれば歴代首相はOとAがほとんど」「ということは、グラフでみると客観性はありますが自意識過剰ですね。だからカネと権力の闘争にもなるんでしょうかね」「それもそうだし、現実軽視でもある」「現実派のBはいないんですか?」「田中角栄がBだったね。列島大改造なんて、ずいぶん大胆なこともしたけど、主観的すぎたから失脚したんだろうね」「難しいですね。結局、理論派のOかAが頼りになっちゃうんですかね」「しかし、世の中もリクツだらけで乱れてきただろう?遠交近攻政策の弊害も出てきてるし。そろそろ足元に明るい現実派の出番なんじゃないか」「するとBかABの出番?」「ABは理想だけど権力慾がないから首相には向かないんじゃない?私の調査によれば、インドから中国北部、朝鮮、そしてアジア一帯っていうのはB型ゾーンなんだ」「それが何か?」「共通してるものがあると思わないか?」「逆にまとまりがない感じですね」「仏教だよ。B型のBはBuddaのBなのだ」「またまたダジャレなんか…」「B型は遊牧民に多いんだけど、腰が落ち着かないのも自意識の弱さのせいかもしれないね」「確かに、石の上にも三年とか一所懸命なんて、B型の為にあるような言葉ですよね」「それを言われると、工学部から法学部に行った私も耳が痛いな。でも、その移り気がかえって仏教を広げたと思うよ。いくら客観性のないBでも、人間共通の老いや死にブチ当たらないわけにはいかなかったわけだ」「それで初めて客観性がもてるってワケですか」「私の科学みたいなもので、逆に言っちゃうと、それがないと死ぬまで自分の世界だけしかわからないってわけ」「それは危ないですねえ」「相手を殺して初めて生き返らないのがわかる、今の子供みたいなものだ。二千五百年前の裸の王様にも、論より証拠が必要で、人間を客観する科学、それがブッダの教えだったんだろう」「ところでブッダって何型だったんですかね?」「やっぱり私と同じBだろ」「バカのBね!?」「バカも一念。B型とハサミは使いようなのだ」
2006年4月20日
サイボーグ
「♪人間なんてララーラーララララーーラー」フォーク歌手の拓郎くんがダミ声で歌っていた。吐き出すように「♪人間なんてやめてしまいたい」と。そこへジャーナリストの立花くんが「やめちゃえばいいじゃん」と言うと、拓郎くん、十五階のベランダから飛び降りようとした。「待ちなよ」「おいらを止めるな!」「愛すべき広島に帰るんじゃなかったの?恋人もいたんでしょ」「…」「そらみろ、思い出が蘇ってきた。ちょっと、この電極を頭に刺してごらん」「何だ、そのケータイ?」「記憶操作機」「やめろ、記憶を消されるくらいなら死んだほうがマシだ」「(やれやれ、その記憶が害なのに…)大丈夫。広島のフォルダは消さないから」立花くん、拓郎くんの頭にチクッとやって、機械をピッピといじる。「これで完了。大方の記憶は消して、古いOSを最新型に更新してやった」機械を頭から抜き取ると、拓郎くん、ギターを手にしてまた歌い出した。「♪人間なんてララッラーララララーーラー」「あれ、おかしいなあ」「♪人間なんてやめてしまいたい」「(全然治ってないや…)じゃあ、ホントにやめちゃえば?」立花くん、試しに言ってみた。すると、拓郎くん、急に笑い出した。「ガッハッハッハ!もう人間はやめたのさ」「どーやって?」「♪人間なんてララッラーララララーーラー」拓郎くん、何も言わず颯爽と歌い続けた。さすがの立花くんも呆れるほどのハイテンションだった。「とうとう気が狂ったか。死ぬまで歌ってろ」ふと、テレビに目をやると、たくさんの人間がゾロゾロと線路敷を行列していた。「また脱線事故かな…」その光景を見て生態学に関心のある立花くんは考えた。「生物はゾウですら足音をたてないのに、人間だけが足音をたてる。体に器械を埋め込んだ人をサイボーグというが、反対に器械に埋め込まれた人を、人間というのだろう。電車で運ばれていく人も、テレビに食い入る人も、器械を使ってるつもりが、いつの間にか器械に使われて、そのうち自分まで器械になっているから、器械みたいに足音をたてるんだ。ゴールデンウィークにこぞってリゾート地に出かけるのも、器械が見た世界を再確認しにいく姿だ。そのうち在りもしない奇怪な世界に行きたいなんて人間が出てくるんじゃない?しまいにはノアの方舟とか、ナスカの地上絵だけ残してモヌケの空だ。拓郎くんが『人間やめたい』なんて歌い出したのも、そんな風に器械に使われて滅びるくらいなら、生物に帰ろう!という野生の叫びだったんじゃないか」そう気づいた立花くん、拓郎くんのダミ声が何だかライオンの雄叫びのように聞こえてきて、羨ましかった。「ボクも人間やめたいんだけど、記憶操作してくれない?」「わッかんねえよ、そんなキカイ」「そのギターよりは簡単だよ」「だったら自分でできんだろ?」「いくら君だって寝てる間にギターは弾けないだろ?」「おいらは寝てる間に曲作っちゃうもんね」「だけど寝てる間に女とはヤれないだろ」「おいらはよく夢精するよ」「やれやれ、人間やめる前に、男やめなきゃならないらしいや」2006年4月26日
ファミリーダム
ナンバーガールの向井はいつものようにアンプのボリュームをフルテンにして、ブチ切れそうなテンションでジャムセッションをやり始めたのに、大先輩のフジオはひたすらリズムを刻むだけで、向井は肩すかしを食らった気分だった。「もっとめちゃくちゃアシッドな人かと思うとりました。もうクスリはやっとらんのですか?」「オレら、団塊の世代ってさ、自分の体、酷使しないと気が済まない悪い癖がある。チャー坊もそうだった」「じゃあ、あの人もクスリで逝っちゃったんすかね?」「あれで気狂った奴はいっぱいいるけど、チャー坊の死は謎って言うか、アクシデントだったと思ってる。君もクスリやってるのか?」「僕ら団塊ジュニアにはもうそんな情熱はないっすよ。昔は♪冷凍都市の攻撃は酒飲んでかわす、なんて唄っとりましたけど」「そいじゃあ、今は音楽一筋ってワケか」「それも何だか物足りないんで、いま、アフリカとか中東に移住しようかと」「音楽は?」「そんなの必要ないでしょう、あっちは毎日戦闘状態なんすから」「そんなに死にたいのか?」「反対すよ。日本って今、少子高齢化じゃないっすか。日本女性なんか平均寿命、世界一だし、出生率なんか1.29でしょう。それって生きるも死ぬも全部、嘘っぱちってことじゃないすか?」「そういうこと、チャー坊もよく唄ってた。奴がシスコで体験してきたことが日本にもそのうち起こるって」「どういうことすか?」「村八分の操り人形って曲、聴いたことないか?」「操り人形…それってまさにオレらのこと?」「気づいてる奴はそうじゃないけど、みんなそれに気づいたらどうなると思う?」「アフリカ?イラク?」「毎日が村八分状態だ」「毎日がトランスフォームド状態なら、いいじゃないすか」「そんなのは周りに不自由があるから自由に見えるだけで、所詮、馬鹿は操り人形にしておくことで社会秩序は成り立つし、ほんの少しの自由の為には大勢の生贄が必要ってことはピラミッドの時代から変わらないんだ」「フジオさんはさっきのセッションで、ずっとリズムに徹しとりましたけど、そういうのが自由なんすか?」「君のプレイを見ていたんだ」「自分は楽しまないんすか?」「自分より他人に楽しみはあるからね」「え、逆でしょう」「君はさっき団塊ジュニアには情熱もないって言ったけど、結構あるよ」「自分ではわからないすよ」「だから他人に楽しみがあるんじゃないか。ついでに才能なんてのも他人のものだよ」「僕は自分の才能しか信じませんよ」「馬鹿らしい。自分なんて一番信用できないね。気イ抜くと、すぐまた同じ事やりだす、無芸無才だ」「じゃあ、フジオさん、何でカネにもならないのに音楽なんてやってるんすか?」「ひまつぶし。っていうか、親も子もないオレにとっちゃ、これが唯一の家族だからさ」2006年5月1日
パフォーマンス
「ブレーンさん、ニューヨークでの入浴、いや、水中生活、今日で五日目ですね。調子はいかがですか?」「あれ?何これ、テレパシー?君は誰?どこにいるの?」「さあ、そんなのどうだっていいじゃないですか。それより、いろいろ質問させて下さい」「マスクかぶってるから、しゃべるのは無理だな」「別にしゃべらなくていいです」「で、質問って何?」「直径2.5メートルの球形の水槽の中には空気と流動食がパイプで送られてるんですってね。流動食はどんな味ですか?」「宇宙食みたいなもんだよ。栄養バランスはいいけど、味がねえ…」「七日目の最後に水中で息を止める世界新記録に挑むそうですが、行けそうですか?」「今日も何度か試みたけど、八分五十八秒は軽く行けそうだね。十分位行くんじゃない」「その透明のアクリルの中でやるんですよね?」「そうだけど、何で?」「誰かが悪戯して笑わせたら、面白いのになって」「それは絶対にやめて欲しい!以前、四十四日間の断食したとき、そういう嫌がらせにあってね」「どういう嫌がらせですか?」「わざわざラジコンでハンバーガー見せつけたり、卵投げつけたり」「それは腹立ちますね」「いや、腹が騒ぐんだよ!」「他にも氷塊の中で六十二時間過ごしたり、三十メートルの柱の上で三十五時間とか、ブレーンさんって一体、何が好きでそんなパフォーマンスばかりやるんですか?」「マジックなんだけど、一応」「それってマジックっていうよりマニックって感じでクレイジーですよ!何がキッカケでそんなパフォーマンスを考えついたんですか?」「友達が牢獄に入れられてさ、その時の体験談聞いたら、すごい、人生観変わったっていうんだ」「どんな風にですか?」「人間が化石になるって」「カセキ?」「外界の人間は絶えず動く生活が当たり前だろ?でも、囚人は毎日、同じ生活だから、何も変わらないことが怖ろしいわけ」「僕の友達の職場も俗に3Kって言って、汚い、キツイ、そして、変わらないっていうのが一番のやめる理由らしいですね」「でも不動の人間には、かえって動く生活の非実在性が見えるというんだ。ふつうの人は時間とか社会通念といった見えない幻影によって絶えず欺かれているとね。だから刑務所に入っても犯罪は減らないっていうんだ」「どうしてですか?」「確かに一時的に閉じ込めたり、肉体を衰弱させることはできるけど、かえって閉じ込めたことで、自分の実在性が見えちゃうわけ」「実在性?」「より野生が目覚めるってわけさ。実は、このパフォーマンスの意味もそこにあるんだ。忙しい都市生活でつい忘れがちな動作を見つめ直して欲しい。息をして、物を食べて、睡眠して、排泄して…っていうね。だけど何が一番辛いかって、性慾の処理なんだ」「オシッコと一緒にアレもパイプで吸い出すんですか?逆流したら大変ですね。水中に白い雲が…」「それは大丈夫だけど、それより睡眠が浅いせいか、いろんな夢が膨らむんだな」「ムラムラするわけですか。じゃあ、不妊治療には最適かもしれませんね」「太古の昔、人類が魚だった頃は、みんな水中でしたわけだからね」「じゃあ、今度、それやって下さいよ!水中ストリップショー!」「白昼の街頭じゃあ、できないなあ」「じゃあ、夜の高層ビルの屋上でライトアップして!」「君がやんなよ」「世界新記録、塗り替えちゃうんですよ」「何の新記録?」「水中でインサートしてる時間」「そんな記録あるかッ!」「何だって最初はそうですよ!」2006年5月5日