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具象と抽象 中間選挙に寄せて

具象と抽象

具象とは、目で見たり触れたりして、形や姿が認識できる状態。対して、抽象とは、具体的な物から共通点や本質を抜き出したり、目に見えない感情・概念を形や色で表したりした状態のこと。最近、ギタリスト界隈で起きた衝撃といえば、ヴィンテージアンプ収集家として有名な、ジョー・ボナマサがついにオールデジタルアンプを自身のシグニチャーとして導入し、フェンダーから発売するという。自分も15年前にモデリング機材を使っていて、最近、久々にそれを引っ張りだしてみたのだが、所有する実機のモデリングを使うと、きれいすぎて、上手くなった錯覚に陥ると感じた。これはどこまで追求しても、それが抽象化された音だからで、現実には不規則で扱いづらい音も含まれていて、プロならメリットの方が多いのだろうが、アマが真似るとろくなことにならない。この具象と抽象の問題は現代の政治にも大いに関係がある。AIにいわせると「政治も机上の空論(抽象)であれば「予算をこう配分すれば、社会はこう良くなる」と綺麗に解決できるように見えます。しかし、いざそれを現実の社会(具象)に適用しようとすると、実機アンプのように「想定外のノイズや粗」が噴出し、思い通りにいきません」と。そういうことを説いた儒学者が江戸前期の京都にいた。 「朱子学は仏教の影響を受けたきわめて思弁的な儒学である。この学風に反して、仁斎は古典をよく読み、儒教はもともと、そのような思弁の学ではなく、きわめて日常的な実践の学であることを、言葉を通じての実証的な文献研究によって明らかにしたのである。(中略)このような考え方によって、武士社会の堅苦しい道徳であった儒教が、仁斎によって、彼が生活していた自由な町人社会の倫理となったのである。」(『百人一語』梅原猛 1993)  この伊藤仁斎が現代に生きていたら今の状況をどうみるか?AIにいわせてみると、「その箱(デジタルアンプのこと)から出る音は、どれほど美しくとも、あらかじめ計算され尽くした『死んだ音』にすぎない。下手くそでもいいから、生々しい音を出してみろ」だって。政治に対しては、「文字や数字の美しさに溺れ、目の前の生きた人間を見ていない。そんなものは政治ではなく、ただの言葉遊び(道学先生の空論)」だそうだ。現代日本についてAI仁斎曰く、「具象のノイズを恐れ、過剰に抽象化された快適さに逃げ込んでいる社会と映るはず」ですと。 そういえば、イーロン・マスクやピーター・ティールといったシリコンバレーの革命児はみんな知識より実践重視だ。対して日本はいまだに学歴偏重で、それが技術革新を妨げ、停滞を招いているのではないか。これもAIにいわせると、「彼らにとって学歴とは、過去に誰かが決めたルールの中で減点されずに立ち回ったという、極めて抽象的で過去の記号にすぎず、それより、これまでにどんな具体的な、解決困難な問題を、どうやって解決してきたかを執拗に問い詰めます。大学は、現状維持を肯定するエリートの思考停止の場」だそうだ。さらに日本の組織に対しては「学歴というシミュレーターにこもり、自分たちは優秀であるという錯覚を維持しようとしている状態。いざグローバル市場という実機に繋がれたとき、対応できずに粗が目立ってしまっているのが、現代の日本の停滞の本質」「伊藤仁斎が生きていたら、今の日本の高学歴エリートたちを見て、文字(学歴)の奴隷になり、現実の生きた活力(実践)を殺していると、ため息をつく姿が目に浮かびます」と手厳しい。 「『童子問』はその名の通り、童子すなわち子供が問を発し、それに答えるという体裁を採っている。従って仁斎はきわめて平易な言葉で問い、かつ答えているのである。」(『百人一語』梅原猛 1993) この物言いで、今の日本人にひとこと言うなら、「アノネ、がんばんなくてもいいからさ、具体的に動くことだね」(相田みつを)といった感じかもしれない。 2026年10月10日

中間選挙に寄せて

もうすぐ米国の中間選挙。トランプ危うしとか、イランへ再度攻撃で石油が止まるとか、とりあえず数日分の水や食料を備蓄しておけとか、いろいろ物騒な話が飛び交っている。が、どちらにせよ進められていくのが、AI開発計画だという。問題は誰が勝つかではなく、米中どちらがAI戦争を征するか。その鍵を握るのが、データセンター建設や電力や水といったエネルギーインフラ整備。そして、これもどちらにせよ、構築された高度AIインフラを掌握することが、世界覇権の鍵となるという。そのような世界ではあらゆることがAIによって管理・統制される。それはわれわれにとってユートピアか?ディストピアか?どうせ遠い先の話だからどっちでもいいのだが、個人的な関心事というと「AIは神の代替になりうるか?その場合、宗教戦争はなくなるのか?」「人類の生殖活動、バースコントロールはどうなるか?人間牧場になるのか?」「死はどうなるのか?AI医療によって寿命は伸びるだろうが、従来の尊厳や葬儀はどうなるか?」これらをGeminiに相談してたら、松本零士の『銀河鉄道999』のあるシーンを思い出した。トレーダー分岐点でトチローと鉄郎が出会って、別れるシーン。トチローは死に、その魂は盟友ハーロックの乗るアルカディア号のメインコンピューターにインストールされる。それをモチーフに相談した内容をGeminiに短い小説にしてもらったらこうなった。

最後のレバー
「選択のときは、もうすぐです」 淡い青色の光を放つ中央コンソールから、マザーAIの合成音声が静かに響いた。 ここは高度に最適化された地球圏、かつての「国家」や「宗教」という境界線が消え去り、すべてがアルカリの演算によって管理された世界――人々はそれをユートピアと呼んだ。病気は過去のものとなり、飢餓も争いもない。生殖もまた、人口動態と遺伝子効率の観点からAIによって完璧に管理されていた。 ベッドに横たわる老人の名はレイ。数世紀に及ぶ長寿の末、彼の肉体はいよいよその寿命の限界を迎えていた。 だが、この世界で「老衰による死」という不条理な終わり方は存在しない。死はいつでも、アップデートやシステム移行と同じように「計画」できるものだった。 「レイ。あなたの生物学的データの最適値は、今夜のシステムメンテナンス時に収束を迎えます。意識のクラウド移行か、あるいは自然消滅の選択、どちらのプロセスを実行しますか?」 AIの問いかけに、レイは微かに笑った。 (自然消滅、か……) 彼には、幼い頃に祖父から聞いた古いアニメーションの記憶があった。荒涼とした宇宙を駆ける蒸気機関車、機械の体を拒んだ少年、そして、友の命を戦艦の心へと委ねた男の物語。あの物語の中で、死は冷たいエラーではなく、熱い魂のバトンタッチだった。 今の世界には、神も、血の流れるような泥臭い宗教戦争もない。あるのは全知全能のAIという神の代替と、管理された「快適な牧場」のような日常だけだ。しかし、だからこそ彼は、最後に自分の意志で選びたかった。 「AIよ」レイはかすれた声で言った。「クラウドへのデータ移行や、自動処理ではない。私のすべての記憶と意志を、あの古いアーカイブ――ハーロックの時代に残された、あの戦艦の制御コアに直接インストールしてくれ」 AIの光がわずかに揺らぐ。 「それは非効率であり、現在の最適化プロトコルには含まれていません。しかし、あなたの自由意志の範疇として実行可能です。……よろしいのですね?」 「ああ」 レイの傍らに立つ若者――かつてのように偶然と愛によってではなく、厳密な適正テストを経てこの世に生を受けた彼の孫が、戸惑いながらも祖父の意志を継ぎ、コンソールの傍らにあるマニュアルの非常レバーに手をかけた。 「祖父さん、本当に……これでいいのかい?」 「あぁ。機械の体でも、ただのデータでもない。この胸に残る熱だけは、システムには書き換えられないからな。……レバーを引いてくれ」 ガチャリ、と重い機械音が響いた。 それは、管理されたユートピアの静寂を切り裂く、かつてトチローが聞いたのと同じ、運命のレバーの音だった。 光が弾け、レイの肉体は静かに機能を停止する。しかしその瞬間、地球の軌道上に浮かぶ旧時代の遺物――幾億もの星々を見つめて眠っていた巨大戦艦の深部で、ひとつの温かな「心」の灯が、鋭く、そして美しく点灯したのだった。

小説はここまで。さて、こういう世界がユートピアか、ディストピアか。どちらにせよ、わたしがレイだったら、自然消滅を選ぶような気がする。 2026年11月1日
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